2025年9月、私たちが日常的に利用しているGoogle検索に、大きな変化が訪れました。
生成AIと対話するようにして答えを導き出す新しい検索体験「AIモード」が、ついに日本でも本格的にスタートしました。

マーケター、特にSEO担当者の中には、「強い危機感」もしくは「大きなチャンス」を感じているという方も多いのではないでしょうか。
直近では、「Rolling Stone」や「Billboard」などの発行元である米Penske Media Corporationは9月12日、Google検索の「AIモード」について米Googleを提訴しました。これまでSEOによって得ていた既存の検索経由の流入が大きく減る可能性があることが主な背景です。
一方で、AIモードをはじめAI検索体験をターゲットにしたマーケティング手法「LLMO(GEO)」も登場しており、現在、業界は現在、悲喜こもごもといった状態です。
筆者は、この変化を正しく理解し対応することで、大きなチャンスに変えることが可能だという考えです。
そこで今回の記事では、Googleの新たな常識「AIモード」の基本から、皆さまが最も関心を寄せるであろう今後のSEO対策の在り方、そして新たに登場したLLMOのことまで、Google公式や海外のSEO会社の最新情報も交えながら、分かりやすく解説していきます。
Googleの「AIモード」とは何か
AIモードとは、Google検索に搭載された、生成AIと対話するようにして答えを導き出す新しい検索体験のことです。

これについてGoogleは公式HPで、以下のように説明しています。
AI モードは、Google の最も強力な AI 検索機能です。何でも質問して AI による回答を得ることができるほか、フォローアップの質問や役立つウェブリンクを使ってさらに詳しく調べることもできます。
引用:「Google 検索の AI モードで AI による回答を取得する」Google
AIモードの狙いは、ユーザーが迅速に全体像を把握し、詳細情報を得るためのリンクやリソースに簡単にアクセスできるようにすることです。
つまり、単なる情報検索ツールから、ユーザーの疑問を解決するための「回答エンジン」へと進化していることを示しています。
例えば、『羽田空港から2025年9月17日から3泊4日で帰って来れる旅行先を教えて』と検索をすると、引用つきで国内から海外まで様々な旅先を提案してくれます。
AI Overviews(AI概要)との違いは?
AI Overviewsは、検索キーワードに対して、AIがウェブ上の複数の情報を統合して生成した要約を検索結果の最上部に表示する機能です。
一方、AIモードは既存検索とは全く違う専用の画面で操作するものです。混同しがちなので注意しましょう。

フランスのSEO企業Botifyは、「AI Overviewsは、消費者の質問を完全に満たすことを意図した詳細な要約を生成AIで作成する」と解説しており、単なる抜粋ではなく、ユーザーの疑問を解決するための「答え」を能動的に生成している点が特徴と言えます。
AIモードはどのような仕組みで動いているか
AIモードの核となっているのは、Googleの先進的な生成AIモデル「Gemini」です。
Googleは、「Geminiは特定のクエリに対し、カスタマイズされたモデルを実行するように設計されている」と述べています。
仕組みのポイントは以下の通りです。
- 検索意図の分析
ユーザーのクエリを分析し、それがAIによる要約が役立つ複雑なものであるかを判断します。 - 情報の統合
ウェブ上から信頼性の高い複数の情報源を特定し、それらを相互に検証しながら、首尾一貫した回答を生成します。 - 引用元の表示
生成された要約の各部分が、どのウェブページからの情報に基づいているかを示すリンクを表示します。
これにより、ユーザーは情報の出所を確認し、さらに深く掘り下げることができます。
AIモードと従来の検索エンジンの仕組みの違いを調査
AIモードと従来の検索エンジンが、それぞれ情報をどのように処理し私たちに提示しているのか、その基本的な仕組みの違いを見ていきましょう。

項目 | 従来の検索エンジン | AIモード |
---|---|---|
ユーザーの入力 | キーワードが中心 (例:「AI 検索エンジン 違い」) | 自然な文章(質問)や対話形式(例:「AI検索と今までの検索エンジンって何が違うの?」) |
情報の処理方法 | 登録された膨大なウェブページから、キーワードとの関連性が高いページをランキング形式で一覧表示する。 | 大規模言語モデル(LLM)が学習した知識を元に、質問の意図や文脈を理解し、ウェブ上の情報を統合・要約して新しい文章を生成する。 |
主な出力結果 | ウェブサイトへのリンク一覧。ユーザー自身がリンク先を訪れて情報を探す必要がある。 | 要約された回答、対話形式での追加説明、アイデアの提案、文章の作成など。情報源へのリンクも提示されることが多い。 |
得意なこと | ・最新情報や速報性の高い情報の検索・特定のウェブサイト(公式サイトなど)を探す ・幅広い情報源を自分で直接確認したい場合 | ・複雑な質問に対して、複数の情報をまとめて要約してもらう ・アイデアの壁打ちやブレインストーミング・文章の作成や翻訳、要約 |
AIモードの検索結果に表示されること
実際のAIモードが有効な検索結果は、主に以下の要素で構成されます。
項目 | 説明 |
---|---|
AIによる回答 | 検索クエリに対する直接的な回答が、中心となる文章で表示されます。 |
引用元サイトへのリンク | AIが回答を生成する際に参考にしたサイトへのリンクが、カード形式などで分かりやすく提示されます。 |
次の質問の候補 | ユーザーが次に関心を持つであろう関連質問がいくつか提案され、クリックすることで対話するように検索を深めていくことが可能です。 |
YouTube動画や画像 | 関連するYouTube動画や画像が表示されます。 |
▼AIモードの表示例

表示される項目は入力したプロンプトによって様々です。
YouTube動画が表示されることから、これからは動画のSEO・LLMOも重要性が増していくことが予測されます。
この表示形式だと、ユーザーはAIの回答である程度疑問を解決可能です。
しかしその分、ウェブサイトのトラフィック減少が心配されています。
AIモードに表示されるページと既存の検索ランキング上位ページは違う
実際に『東京の観光地』で検索順位、AIモードの引用元サイトの順位の違いを実際に試したところ、表示のされ方はやはり違いました。
検索順位で1位だった『スカイツアーズ』は、AIモードでは引用されていません。

ウェブサイトのトラフィックへの影響はどうなる?
AIモードの普及により、ウェブサイトへのトラフィックは質・量ともに変化すると予測されています。

トラフィックの「量」の減少
AIの回答でユーザーは情報を得られるようになるため、個別のウェブサイトをクリックする必要性が減少します。
これにより、多くのウェブサイトで自然検索経由のトラフィックが全体的に減少すると予測されています。
「過去半年間で、米Hubspotのブログへのトラフィックが80%減少した。」というニュースも記憶に新しいです。
ヤミニ・ランガンCEOは「生成AIの登場で、これまでのマーケティングファネルが機能しなくなった」と指摘しており、日経大手メディアNEWS PICKSでも取り上げられるほど話題になりました。
トラフィックの「質」の変化
一方で、AIによる要約や回答を読んだ上で、さらに詳しい情報や専門的な解説、商品やサービスの購入を目的としてウェブサイトにアクセスするユーザーは、より明確な目的意識や高い購買意欲を持っていると考えられます。
そのため、ウェブサイトへの訪問者数自体は減少する可能性がありますが、一方で実際に訪れるユーザー一人ひとりの「質」は向上するかもしれません。
世界的なSEOツールであるAhrefsは、AI Overviewsの分析において、AI Overviewsの分析を通して、「情報収集クエリ(Informational queries)」が最も大きな影響を受けやすいと指摘しています。理由として、簡単な事実や定義を調べる検索の場合、ユーザーがAIの回答だけで満足し、ウェブサイトをクリックしない「ゼロクリックサーチ」が増加する可能性があるからです。
また、Semrushの研究でも、AI Overviewsに表示されるサイト(ドメイン)は、従来のオーガニック検索で1位になるサイトと必ずしも一致しないことが分かっています。これは、AIが「最も権威あるひとつの答え」だけではなく、「多様で信頼できるさまざまな意見や視点」を組み合わせて提示しているためだと考えられます。
これらの調査結果から、単に情報を提供するだけでは十分なトラフィックを維持することが難しくなりつつあり、今後はより高度な専門的知識や独特の視点、深い洞察を提供することの重要性が高まっていくといえるでしょう。
次の章では、具体的な戦略について見ていきましょう。
「SEOの終わり」は本当か?AI検索時代に選ばれるための戦略
結論から申し上げますと、「SEOは終わりません。しかし、その戦略や実施する施策は見直す必要があります」。
これからは、上位表示を目指すことに加えて、「いかにAIに信頼できる情報源として認識され、引用されるか」という視点が不可欠になります。
AI検索時代に選ばれるための戦略を見ていきましょう。
既存のSEOには引き続き取り組む
現状、AI検索で表示を目指す方法は、基本的なSEOの延長線です。
実際、Googleの公式文書でも以下のように記載されています。
AI 機能での表示方法
引用:「AI 機能とウェブサイト」Google
Google 検索全般と同様に、AI 機能にも基本的な SEO ベスト プラクティスを適用できます。具体的には、Google 検索の技術要件を満たすこと、検索ポリシーを遵守すること、信頼性の高い有用なユーザー第一のコンテンツを作成することなどの主なベスト プラクティスを重視します。
より現場的な視点を付け加えると、SEOでこれまであまり重視されていなかったいくつかの施策の優先度が上がるようなイメージです。
例えば、サイテーション(自社ブランド名や会社名が他のサイトで言及されること)はこれまでSEOではあまり重視されていませんでした。
しかし、Ahrefsが行った調査では、ブランド名のサイテーション(Branded web mentions)が最もAIによるブランド推奨と相関関係があることがわかりました。

これまでのSEOでは被リンクの方がサイテーションよりもはるかに重視されていましたが、AI検索への表示のためにはサイテーションも重要になることがわかります。
サイテーション以外の要素においても、これまで優先度が低いとされてきた要素の優先度があがるため、施策や戦略を組み立てなおす必要が出てきたのです。
こうしたAI検索時代に対応するための取り組みを「LLMO(」と言います。
LLMOに取り組む
LLMOとは、従来のSEOをさらに発展させ、「AIが生成する回答に自社サイトの情報が引用・参照される」もしくは「自社サービスを推奨してもらう」といったことを目指す、新しいマーケティング手法を指します。
既存のSEO施策にプラスして、もう目の前に迫っているAI検索時代に向けてWebサイトや情報発信方法を最適化していきます。
シュワット株式会社のLLMOコンサルティングサービスでも、「AIに選ばれること」と「従来検索での上位表示」のどちらもSEOハイブリッド型の支援をしています。
現状、マーケティング効果が引き続き大きいSEOで引き続き成果を伸ばしつつ、今後加速度的に重要性が増すAI検索への対応も実現するサービスです。ぜひ以下よりチェックしてみてください。
ユーザーではなくAIのためだけの情報提供サイトが必要になる可能性も
将来的には、SEOを一切意識せずAI検索だけを意識した手法が出てくる可能性も示唆されています。
(ただし、現状メリットはなく実施は推奨されませんが…。)
実際、OpenAIの創設チームメンバーのAndrej Karpathy氏は、AIが情報収集の主要な手段となる未来では、考え方を転換し、「LLMのためだけにコンテンツを公開する」ことが重要になるかもしれないという指摘をしています。
つまり、これまでSEOで重要だったユーザーのためのコンテンツではなく、「ユーザーには一切表示されずLLMだけに表示されるコンテンツ」をWebサイトに公開し、LLMOを行う将来があるかもしれません。
このことについては、博報堂も以下のように述べています。
企業は、検索アルゴリズムで拾われるコンテンツを作るのではなく、データプロバイダーのようにデータを提供するという考え方に改める必要がある。
引用:博報堂の「メディア環境研究所フォーラム2025」より
LLMOでは、AI専用のサブドメインをWebサイトに構築し「ユーザーではな
AIモード対策・LLMOはシュワット株式会社へ
GoogleのAIモード導入は、検索の歴史における大きな転換点とも言えます。
しかし、Googleの「ユーザーに有益な情報を提供する」という理念は不変です。
これは、ユーザーのために質の高いコンテンツを作り続けることの重要性が、より一層高まったことを意味します。
この大きな変化の波を乗りこなし、新たな検索時代でビジネスを成長させるためには、専門的な知見と戦略が不可欠です。
私たちシュワット株式会社は、これまで培ってきたSEOのノウハウと、AI時代の新たな潮流を掛け合わせ、お客様一社一社に最適化したLLMO戦略をご提案します。
AIモードに関するよくある質問(Q&A)
AIの回答は、常に正しいのでしょうか?
AIは信頼性の高いサイトを参考にしていますが、100%の正確性を保証するものではありません。
Google自身もこの機能を実験的なものと位置付けており、最終的には引用元の一次情報で確認することが推奨されます。
検索広告の表示はどうなりますか?
すでに、米国などで本格的に導入されているAIモードでは、広告が表示され始めています。主な表示形式は以下の通りです。
- AIが生成した回答内に表示:AIが生成する文章や要約の中に、「スポンサー」や「広告」といったラベル付きで、関連性の高い商品やサービスの広告が自然な形で挿入されます。例えば、「ペットを飛行機に乗せる方法」と検索すると、AIの回答の中にペット用キャリーバッグの広告が表示されるといった形です。
- 回答の下部や関連セクションに表示:AIによる回答が表示された後、その下や横の関連情報セクションに広告枠が設けられるケースもあります。
これらの広告は、ユーザーが検索したキーワードだけでなく、AIが理解した「検索意図」や「文脈」に基づいて表示されるのが大きな特徴です。